GCPのコスト管理ツールを理解する

クラウドはオンプレミスと比べ簡単に使い始められ、初期費用がかからないというメリットがあります。一方、従量課制かつ地域やサービスごとに料金が異なったり、さまざまなオプションや条件が存在し、コスト管理がしづらいと感じられることも多くあります。

各クラウドベンダーはユーザーに明確な料金を提示するため、コストに関わるコンソールを提供しています。Google Cloud Platfrom(GCP)でも 請求およびコスト管理ツール を無料で提供しており、請求額や細かい粒度でのコストが確認できます。

GCPのコスト管理ツールについて

GCP のコスト管理ツールは、コストをモニタリングし、管理と最適化を行うためのツールで、AWS における AWS Cost Explorer や Azure における Azure Cost Management and Billing に相当します。

GCP のコスト管理ツールの利点は、(1) 組織全体や部門・チームごとなどさまざまな単位での費用の把握、(2) 管理ポリシーや権限と組み合わせた費用の制御、(3) レコメンデーションによる費用の最適化が挙げられています。

本記事では、次節で GCP のコスト管理ツールでできる基本的なことを確認した後、他のクラウドベンダーが提供する同様のツールとの比較をしたいと思います。

GCPのコスト管理ツールでできること

1. コストと利用状況の確認

GCP のコンソールにログイン後、メニューの「お支払い」からコスト管理画面に遷移します。対象の請求アカウントを選択すると、その請求アカウントに紐づく請求に関する情報が確認できます。

    a. コストの概要
      最終的な請求額をはじめ、サービス単位、プロジェクト単位といったさまざまな粒度で任意の期間の利用料金が確認できます。さらに利用料金の推移や予測、利用料金の高いプロジェクトやサービスをデフォルトで表示してくれるため、コストがかかっている箇所を簡単に確認することができます。
    b. コストの詳細
      レポートページにはコストの詳細を把握するためのさまざまなフィルターが用意されています。プロジェクトやサービス単位以外に下記単位での細かな指定が可能です。
        i. SKU: サービス単位よりもさらに詳細な管理単位
        ii. リージョン:サービスを利用した地域
        iii. ラベル: リソースに対して付与することのできる任意の値

2. コミットメントの確認

GCP には1年または3年の期間を指定し、コミットメント金額を支払う代わりに特定のリソースを割安で利用できる確約利用割引という仕組みがあります。コスト管理画面では、この確約利用割引を利用している場合に、その一覧や使用状況が確認できます。

推奨事項へのリンクも表示されており、遷移先のページで現在の利用状況を加味したコミットメントの推奨内容が確認できます。

3. 予算とアラートの設定

設定している予算とアラートの一覧、新規の予算とアラートの設定が可能です。

予算とアラートの設定可能項目

項目説明備考
予算の名前任意の名前を設定
期間月別、毎四半期、毎年、期間を指定*「期間を指定」の場合はカレンダーから開始日、終了日を指定する。開始日のみの指定も可。
リソースプロジェクト、サービス、ラベル複数のリソースの組み合わせでの指定が可能。指定しない場合は全体が対象になる。
オプションクレジットや割引を対象金額に含めるか指定
金額指定額、前期間の費用*「前期間の費用」は「期間」を月別、毎四半期、毎年に設定した場合のみ利用可能。
しきい値割合もしくは金額複数の設定が可能。
しきい値の対象実値、予測値*「予測値」は「期間」を月別、毎四半期、毎年に設定した場合のみ利用可能。
通知の管理1. 課金管理者とユーザーにメールアラート
2. プロジェクトとモニタリングチャネルを指定し メール通知
3. Pub/Subトピックをこの予算に
1から3の複数選択が可能。

他のクラウドと比較した特徴

筆者がよく利用する AWS のコスト画面と比較してみて、良いと思った点、今後に期待する点を記載しました。

良い点

    a. アカウントの設定次第では円表記でデータが表示される。
      最終的な請求額も円なので請求額とあわせて日々の利用額の確認やアラートの設定ができるのは大きなポイントになります。
    b. ページごとに推奨されるドキュメントのリンクが表示される。
      直感的に操作できるUIではありますが、設定方法が記載されているドキュメントページやチュートリアルのページにすぐに遷移できるのは良いと感じました。

今後に期待する点

    a. 利用月と請求月で金額が異なる場合がある。
      これは仕様なので仕方ないのですが、請求額の一部に翌月の利用料の一部が含まれていることがあります。GCP のコスト画面では利用月と請求月でそれぞれ可視化できるようになっていますが、利用月と請求月を統一してもらえると分かりやすいように感じました。
    b. 予算設定で日別の指定がない。
      カレンダーの指定以外では月別が最小単位のため、日ごとにコストが跳ね上がる可能性のあるユーザーにとっては日別の指定もあると柔軟性があるように感じました。

まとめ

日々新しいサービスや価格モデルがリリースされるクラウドの世界では、コスト管理ツールの使いやすさや機能性は非常に重要です。定期的な利用料の把握や分析を定着させることで想定外の金額の請求書を受け取るということはなくなります。GCP ではドキュメントに加え動画やハンズオンも用意しているため、これらを活用しコスト管理ツールを使いこなしましょう。

執筆者

Rena Mochizuki

Principal Customer Success Manager

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