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FinOps
August 30, 2022

コラム:「拡張型 FinOps」(Augmented FinOps)

新井 俊悟
取締役 COO/CFO
翻訳は機械翻訳により提供されています。提供された翻訳内容と英語版の間で齟齬、不一致または矛盾がある場合、英語版が優先します。

毎年夏に米・Gartner 社から新興技術のハイプ・サイクルを取り上げたレポートが発表されていますが、米国時間 8月10日に今年の報告書が発表されました。「ハイプ・サイクル」は、注目されつつある新興技術が実用化に至るまでのどの段階にあるかを示しているもので、新技術は集めた過大な期待を一度幻滅させたのちに現実的な実用化へと進んでいくという経緯を経るという仮説をもとにしています。詳しくは、Gartner 社のサイト(日本語)をご確認ください。

今年のハイプ・サイクルでは、ZDNet の記事がタイトルでも言及しているようにメタバースや NFT などが注目されていますが、それらに分け入るかたちで「拡張型 FinOps」(Augmented FinOps)が登場しています。

本記事では、この「拡張型 FinOps」がどういった概念を指しているのか考えてみたいと思います。とりわけ、拡張型 FinOps は今回発表のハイプ・サイクル中では、いまだにアイデア・コンセプト段階にあることを示す「黎明期」(Innovation Trigger)に位置づけられ、実用段階にあたる「生産性の安定期」(Plateau of Productivity)に到達するまでは 5〜10年かかると推計されていますが、「FinOps」とこの報告書にある「拡張型 FinOps」を区別しないと、FinOps の定着はまだかなり時間がかかると誤った理解をしてしまうおそれもあるので、少し補助線を引いてみようと思います。

Hype Cycle for Emerging Tech, 2022 (Gartner)
Hype Cycle for Emerging Tech, 2022 by Gartner

用語解説:FinOps」の記事で見たとおり、FinOps(クラウド FinOps)を推進する非営利団体 FinOps Foundation は

FinOps は、いまだ発展の途中段階にあるクラウド財務管理にかかわる規律(discupline)であり、文化的な試み(cultural practice)である。それは、開発・財務・IT・事業の各部門が共同してデータドリブンなクラウド支出を決定をすることによって組織が最大のビジネス価値を得ることを可能にする。(出典:What is FinOps by FinOps Foundation)

と FinOps(クラウド FinOps)を定義しています。

一方、今回の報告書において「拡張型 FinOps」は以下のように定義されています(参照:What’s New in the 2022 Gartner Hype Cycle for Emerging Technologies)。

「拡張型FinOps」は、AIや機械学習の活用によって、アジリティやCI/CD、財務的ガバナンスや予算計画・コスト最適化のための労力へのユーザーフィードバックといったDevOpsの主要概念を自動化します。

ここに挙げた 2つの定義を見比べると明らかなように、「規律(discipline)や文化的な試み(cultural practice)」と定義される FinOps(クラウド FinOps)と比べて、今回のハイプ・サイクルで登場した拡張型 FinOps は「AI や機械学習によって自動化されたプロセス」である点に力点が置かれているようです。

では、今回の報告書に拡張型 FinOps が登場した背景を見てみましょう。

今回の報告書では、取り上げられている25の新興技術が、以下の 3つのテーマに分類されています。

  1. 没入型体験の進展・拡張 (Evolving/expanding immersive experiences)
  2. AI によるオートメーションの加速 (Accelerated AI automation)
  3. 最適化されたテクノロジスト・デリバリー (Optimized technologist delivery)

前出 ZDNet の記事のタイトルにあったメタバースや NFT はこのうち 1つめのテーマのなかに含められていますが、拡張型 FinOpsは「最適化されたテクノロジスト・デリバリー」という 3つめのテーマに含められています。このテーマに分類された諸技術は「デジタルビジネスを築くうえでの主要構成要素」であり、「プロダクトやサービス、ソリューションデリバリーを最適化・加速させたり、事業運営の持続可能性を高めるフィードバックやインサイトを提供する」とまとめられています(参照:What’s New in the 2022 Gartner Hype Cycle for Emerging Technologies)。ここで気になるのが「テクノロジスト・デリバリー」という用語です。

調べてみると、ガートナーは昨年頃から「ビジネステクノロジスト」(Business Technologist)が重要性を増しているという発表をしています。ビジネステクノロジストとは「IT部門に所属せず、事業目的のために技術や分析のケイパビリティを生む者」と定義され、マーケティング部門所属の Python エンジニアや財務部門所属のデータサイエンティストなどがその例として挙げられています(参照:Definition of Business Technologist – Gartner Information Technology Glossary)。

このようにたどってみると、今年のハイプ・サイクルの 3つめのテーマ “optimized technologist delivery” というのは、「ビジネステクノロジストのもたらすケイパビリティのデリバリーが最適化された状態を実現する諸技術」と補って理解するのが適切なのかなと思います。

そうした文脈が背景にあることを考慮すると、拡張的 FinOps という領域において想定されるビジネステクノロジストとは、FinOps(クラウド FinOps)をドライブする役割を担う集権的なチーム(FinOps Team)のメンバーのことのようです。

なお、Gartner は 2018年7月に発表した「Hype Cycle for Cloud Computing 2018」報告書のなかで、「Cloud Service Expense Management」(CSEM)を「『過度な期待』のピーク期」(Peak of Inflated Expectations)に位置づけていました。この報告書で CSEM は「クラウドサービス事業者から提供されるサービスに関する費用を点検し、照合するおこない」だと定義されています。費用管理や最適化のためのツールやプラットフォームではなく「行為」として定義されている点で、CSEM は FinOps と似た概念を指していたと考えてよさそうです。

今回、最新のハイプ・サイクル報告書で「拡張型 FinOps」が登場したということは、FinOps(クラウド FinOps)≒ CSEM は「幻滅期」(Trough of Disillusionment)を乗り越えて組織内で営々とおこなわれていることが(世界的には)すでに所与の現実としたうえで、それが自動化されていく「拡張型 FinOps」がこれから 5〜10年で実現へと向かうということが主張されているのだと理解すべきでしょう。

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