1. 初開催の CCoE Summit 2023 について
2023年7月20日、Google Cloud主催のCCoE Summitが開催され、私も運営メンバーの一員として参加させていただきました。当日は国内のCCoEのリーダーの方々と直接コミュニケーションをとることができ、貴重な機会となりました。また、当初想定していたよりもはるかに多い来場者・参加者に参加いただき、CCoE への関心の高まりを運営メンバー一同も目の当たりにしました。
今回のトピックであるCCoE(Cloud Center of Excellence)は、企業がクラウド技術を最大限に活用するための組織や取り組みを指す言葉です。近年、日本のビジネスシーンでもこの言葉を耳にすることが増えてきました。実際、今回のCCoE Summitへの応募数や参加者数を見ても、CCoEに対する興味・関心が高まっていることは明らかです。この増加の背景には、企業のデジタルトランスフォーメーションの加速や、クラウド技術の普及が挙げられます。また、企業が持続的な成長を遂げるための戦略として、クラウド技術の導入や活用が不可欠となってきていることも要因と考えられます。
2. 当日のCCoE Summitのアジェンダと概要
CCoE Summitでは、CCoEの実践やその成功要因、そしてクラウド技術の最新トレンドに関する多様なセッションが展開されました。特に、クラウドを活用した組織変革やCCoEの活動を支援するためのコミュニティーの重要性に関する事例紹介が注目を集めました。
大手企業のクラウド導入成功事例や、CCoEが単なる社内の”便利屋”としてではなく、コミュニティ活動のような形での知識共有や専門家のネットワーク構築を重視する新しい組織構造と役割についての議論が活発に行われました。このようなアプローチは、各専門分野のエキスパートの知識や経験を集約し、組織全体のクラウド活用を促進するための共通のプラクティスとして収斂してきている印象を受けました。
アクセンチュア株式会社の青柳氏による報徳仕法を活用したCCoEのをあり方やCCoEを率先して仕組み化している企業の社内で立ち上げる側とCCoEの立ち上げの支援をする立場での議論など。今後CCoEをリードするであろう立場にある参加者にとっては非常に有意義な時間でした。
*詳しいアジェンダや各セッションの内容については、こちらの公式サイトをご覧ください。
3. CCoEの取り組みと私たちアルファスが取り組む FinOpsとの関連性
CCoEと私たちアルファスが取り組む FinOpsは、どちらもクラウド技術を活用したビジネスの最適化を目指すものです。CCoEはクラウド技術の導入や活用を推進する組織の役割や取り組みを中心に、FinOpsはクラウドのコスト管理や最適化を中心に考えられます。以下は各用語の定義です。
CCoEとは、企業などで情報システムのクラウド利用を推進するために設置される、全社横断型の組織であり、 クラウド活用に必要な人材や資源、知見などを集積し、各部門のクラウド利用を促進するための組織です。
FinOps(クラウド FinOps)とは、単発(一回性)のコスト最適化やコスト削減のアクションではなく、この用語の由来のひとつである DevOps と同様に、ビジネスの価値を継続的に向上させることを目的としてクラウドへの支出(投資)に関わるさまざまな社内(組織内)のステークホルダーが協力するための規律や文化に関する概念です。
FinOpsについての用語解説の記事はこちら:
当社のお客様でも去年よりもコストの最適化関連のお問い合わせや意見交換も増え、CCoEの立場から企業全体のコストの管理、可視化、最適化の支援をする方々と話す機会も増えてきました。
そのような背景もあり、私たちアルファスとしても、CCoEの取り組みは非常に関心のあるトピックです。特に、FinOpsとの関連性や、クラウドコストに対する関心が高まっている現状を踏まえると、CCoEの取り組みは今後アルファスのビジネスにおいて欠かせないものになると考えています。このような市場環境の中、CCoE Summitで得た知見を参考にこれからもFinopsのイネーブラーとして様々な企業のCCoEの支援ができればとあらためてアルファスのミッションについて再認識することができました。
4. CCoE Summit での学び(クラウド費用関連を中心に)
上述のとおり、CCoEと我々の取り組むFinOpsは共通のクラウド最適化を目指すものだと考えています。そこで、今回参加したCCoE Summitでの各セッションやディスカッションは私たちのサービスや取り組みにどのようにCCoEの考え方や手法を取り入れることができるのか、具体的なアイディアやヒントを得ることができる大変貴重な機会となりました。
例えば、複数のステークホルダーがいる企業の中で各ステークホルダーに合わせたコストの可視化を提供できるダッシュボードやクラウドのフェーズに合わせてコストの最適化レコメンデーションなど。CCoEとして状況が常に変動するクラウドのコストを管理、最適化するために必要なソリューションは必要だと感じました。効率化、自動化できる業務を増やしできるだけCCoEメンバーの貴重な時間を有効活用することが長期的にクラウド化を進める上で重要となってきます。
これは株式会社NTTドコモの森谷氏の基調講演の中で言及されていた、CCoEの活動として各ステークホルダーを「支援」する立場から「牽引」へと変わってきたという内容からヒントを得ました。社内、社外問わず複数のステークホルダーの要望を聞きつつ、クラウド最適化を牽引する立場であるCCoEにとって各ステークホルダーの状況やニーズに合わせたクラウドコスト最適化が実現できることは大きな価値となります。
他にも、ウルシステムズ株式会社の鎌形氏による基調講演でもクラウドコスト最適化の重要性について話されていました。シャドーITやクラウドへ移行に伴って発生する想定外の費用など。クラウド導入の各フェーズで想定外に発生してしまうようなコストの検知、モニタリングできる仕組みなどがあるとクラウド移行も安心して実行することが可能です。
これらは一部のアイディアではありますが、今回のCCoE Summitで基調講演をされた各CCoEのリーダーの実際の取組みを聞けたのはとても参考になりました。今後もこのような機会があれば積極的に参加、議論をしたいと考えています。
5. FinOps の観点から CCoE に期待すべきもの
当日のCCoE Summitでも言及されていたように今後はクラウド人材の育成と獲得、能力を最大化することが重要になってきます。またマルチクラウドを前提としてCCoEのあり方など日本国内ではまだ具体的に話題となっているわけではありませんが、アメリカではすでにマルチクラウドを前提としたCCoEについて積極的に議論が進んでいます。
Finopsとの関連性も興味深く上述でも触れたようにCCoEとFinopsはクラウド最適化という共通項があります。FinOpsの観点からCCoEに期待されるのは、クラウドのコスト効率とビジネス価値の最大化です。CCoEは、クラウド技術の専門家が集まるセンターとして、組織全体のクラウド戦略の策定や実行をサポートする必要があります。FinOpsの原則として、クラウドコストの透明性、最適化、および予算管理が挙げられます。これらの原則を実現するために、CCoEは持続的なコミュニケーションと協力を促進し、クラウドの利用に関する最適なプラクティスやツールを提供することが重要です。
例えば、FinOpsの公式サイトでも取り上げられていますが、クラウドユニットエコノミクスの考え方はクラウドを推進する上で重要な指標となっており、CCoEなどクラウドを推進する立場では共通認識とされています。
クラウドユニットエコノミクスの定義:
クラウドユニットエコノミクスは、組織がクラウドコンピューティングを活用してビジネスを展開する際に、効果的な経済的判断と意思決定を行うための概念です。具体的には、クラウドリソース(サーバー、ストレージ、ネットワーキングなど)を単位として、その利用にかかるコストとビジネスのパフォーマンス(利益など)を分析し、最適なコストとパフォーマンスのバランスを実現することを目指します。
FinOps Cloud unit economicsについて:
クラウドユニットエコノミクスを把握することで、ビジネスとクラウド最適化をかけあわせた評価軸を設けることができ、FinOpsとCCoEの共通の目的であるクラウド最適化を図る共通の指標を設けることができます。ビジネス(売上や利益率など)指標とクラウドコストを紐付けた指標をCCoEの一つのKPIとすることで、企業のクラウド最適化についてFinOpsの観点を取り入れたかたちで評価をすることができます。
海外ではこのような取り組みをすでに取り入れている企業も増えており、FinOpsとCCoEの共通の目的であるクラウド導入によるビジネス価値の最大を実現するための仕組みを実現しています。
*余談ではありますが、FinOpsについては近日開催されたFinOpsの最新トレンドが発表されるFinOps X 2023というイベントにアルファス代表の廣瀬が参加し、体験レポートをまとめているので、こちらもぜひご覧ください。
まとめ
Google主催のCCoE Summit 2023は、クラウド技術の活用とコスト管理の最適化に関する最新の情報やトレンドを学ぶ絶好の機会でした。私たちアルファスとしても、このようなイベントに参加することで、お客様に提供するサービスの質を向上させるための新しいアイディアやヒントを得ることができました。今後、CCoEの取り組みは、さらに深化していくことが予想されます。特に、クラウド技術の進化やビジネス環境の変化を踏まえると、これらの取り組みを組織全体で進めることが、ビジネスの成功の鍵となっていくと思います。引き続きこのようなイベントに積極的に参加し、最新の情報やトレンドを把握することで、お客様に最適なサービスを提供していきたいと考えています。