はじめに
本記事では2022年に約3年ぶりに開催されたAWS Re:Inventのセッション情報を中心に2022年のAWSコスト最適化についてまとめています。
記事を通してわかること
- 2022年に開催されたAWS Re: Inventのコスト最適化セッション一覧
- 2022年時点でのAWSコスト最適化方法の種類と方法(概要レベル)
記事を通して、AWSのコスト最適化に課題を抱えている方のお役に立てば幸いです。
記事構成
- 1.2022年 Re:Inventのクラウドコスト関連セッションまとめ
- 2.AWSの提唱するコスト最適化について
- 3.まとめ
2022年 Re:Inventのクラウドコスト関連セッションまとめ
コロナウイルスのパンデミックの影響から2020年、2021年はオンライン開催となっていたAWS re:Inventが今年は約3年ぶりの通常開催。約6万人以上が来場する大規模のイベントとなりました。
イベント開催期間の5日間で約1,500以上のセッションが行われましたが、その中からコスト最適化で重要なトピックをいくつかまとめました。
COP(Cloud Operations)というカテゴリの一部が基本的にコストに関わるセッションであり、その中でも以下のセッションがコストを中心に言及されていました。
- (COP203) Manage and control your AWS costs
- (COP205) Simplify your AWS cost estimation
- (COP207) Moving from paying for what you use to what you need
- (COP202) Cloud metrics strategy and customizable billing
- (COP208) Optimize other services
- (COP217) Ways to avoid cost surprises
- (COP218) Measuring your cloud unit economics
- (COP307) Track and visualize your AWS cost and usage KPI targets
- (COP335) Customize billing and cost reporting with AWS Billing Conductor
- (COP336) Visualize, understand, and manage your AWS costs
参照URL:AWS re:Invent 2022 Cloud Financial Management program preview
上述しているセッション以外にも複数のクラウドコスト関連セッションが開催されており、去年のオンラインイベントと比べてもコストの重要性が高まっていると感じました。3年前まではリソースの可視化や管理、透明性に言及する内容が多く見られましたが今年はFinops, Cloud Financial Management (*2)にフォーカスしたサービスが増えており、以前と比べAWSでもクラウド移行からクラウド最適化に向けたソリューションに力を入れ始めている強い印象を受けました。
クラウドコスト最適化の潮流はAWSだけではありません。MSP/SI企業でもクラウドコスト最適化・管理サービスの紹介が増えており、市場全体で1つの大きなトレンドになっているように感じました。
*CFM (Cloud Financial Management
AWSの提唱するコスト最適化について
コスト最適化のためのコスト可視化
クラウドコスト最適化までの手順(クラウド最適化ジャーニー)について述べているセッションがあったので、以下に内容をまとめました。
アジェンダ:
- 1.クラウドコスト可視化のために必要なこと
- 2.コスト最適化の手段
クラウドコスト可視化のために必要なこと
冒頭でコスト最適化をおこなうには現状を理解することが重要であると述べています。多くの企業では現状理解ではなく、コスト削減施策からはじめてしまうことにより正確なKPIの策定や目標達成までの道のりを描くことができない状況に陥ってしまいます
そこで、AWSのRick Ochs(Principle product manager, Cloud Optimization)氏はコストの可視化までの工程をクラウドコスト可視化ジャーニーとしてステージごとに説明しています。
- 1.カオス
- 2.意識の醸成
- 3.セーフガード
- 4.ガバナンス
- 5.クラウド最適化
「カオス」のステージでは自社の事業に適したクラウドコストを把握できていない状態を指します。利用するクラウドサービスの選定やクラウドを運用する上で目標とするKPIの設定など、向かうべき指針がない状態がこのカオスにあたります。
そこから「意識の醸成」では少しずつクラウドに精通するエキスパートが増え、利用するサービスや各プロジェクト、部門ごとに目標とする利用料が設定され、自社に最適なクラウド活用方法が見えてくるようになります。
「セーフガード」では今までの取り組み、ナレッジに対して企業ごとのコンプライアンス、セキュリティー観点からの改善がおこなわれます。
このステージへの順応が難しいことから多くの企業ではAWSからの支援やパートナーの協力を得ることで次のステージへ進みます。
「ガバナンス」ではタグの管理、Organization Unitの導入などを通して組織全体で利用しているサービスとビジネスとの関連性を理解します。
そして、最後の「クラウド最適化」のステージに移ります。これらのステージを経由することで自社のビジネスに合わせた最適なインフラを構築しつつ、クラウド最適化をおこなえます。
コスト削減手段
事業に最適なクラウドの活用方法が理解できた状態で実行できる最適化方法は大きく4つあります。
- 1.割引オプションによるコスト削減
- 2.未使用リソースの削除
- 3.リソースの最適化
- 4.リソースの停止
それぞれの手段で見込まれる削減率は以下の通りです。
- 30%:割引オプションによるコスト削減
- 20%:リソースの最適化
- 20%:リソースの停止
- 5%:未使用リソースの削除
*各削減方法の合計値が75%ではなく、65%と記載されているのは対象とするリソースが一致するものもあるため。
各削減方法を実行する上で重要なのは環境に合わせて適切な手段を選ぶことです。例えばリソースを継続的に利用する本番環境の場合には、リソースの最適化からReserved Instances(以下、RI), Savings Plans(以下、SP)の購入オプションの検討をおこない、検証環境ではスポットインスタンスを検討するなど。
本番環境:
検証環境:
AWSではRI, SP活用のベストプラクティスとして短いサイクルで自社のリソースをモニタリングしながら購入内容の検討をすることを推奨しています。
クラウドでは頻繁に新サービスをリリースすることからも最適解が日々変わっていきます。事業の成長に合わせてクラウドを活用することからも、規則的にRI, SPの購入検討をおこない最適化していくことをベストプラクティスとしているようです。
環境や利用するサービスによってコスト削減方法は変動しますが、着手するべき手順と振り返る頻度についてまとめました。
順序についてはリソースを最適化することで購入対象とするRIやSPが変わる可能性があるため、リソース最適化とリソースの停止が先に実施するべき項目とされています。
RIとSPの購入頻度についても購入、評価、再購入のサイクルの頻度をはやく回せれば回せるほど良いと述べていますが、企業によって最適解が異なるため運用負荷にならない程度で実施できる頻度を推奨しています。
コスト削減方法と着手手順についても企業に合わせて最適解が異なるため、全体像の把握とシチュエーションに合わせて最適化の手段を選択できることが重要だと筆者は考えます。現在のクラウドの導入フェーズやコストの目標値に合わせて着手するべきコスト削減方法を検討するとよいでしょう。
例)すでに稼働が安定している本番環境の利用料を削減するためには、まずリソースで最適化できる部分を見直した上でRI、SPの購入の検討します。そして、四半期に一回ほど見直しをおこない、再購入や削減効果についてまとめる機会を設け運用していくなどが考えられます。
これまでクラウドコスト最適化の手段や考え方に焦点をあてて説明をしてきました。2022年に開催されたAWS Re:inventの各セッションでは上述したコスト可視化やコスト削減の各手段についてフォーカスをあてたセッションで構成がされていました。
他にもFinopsについてのセッションも増えていることからもクラウドコストへの関心が例年よりも高まっていることがわかります。これらのことからも、2023年を通してクラウド最適化は注目されるトピックになっていくと考えます。今後もアルファスではクラウドコスト関連のトピックを中心に情報を発信していく予定ですので、ご期待ください。
参考文献
- AWS re:Invent 2022 - Cloud cost optimization: Only paying for what you need (COP207)
- AWS re:Invent 2022 Cloud Financial Management program preview
関連記事